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ビジネスモデル特許
    ・成立の経緯 
    ・作用効果
    ・問題点と必要性
    ・特許取得のため対策
ビジネスモデル特許Q&A
 
 
 
 
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ビジネスモデル特許/Business method patent
2000年9月  
 
  ビジネスモデル特許とは、明確な定義はありませんが、一般的に、コンピュータやインターネットを利用したビジネス手法や仕組みに関する特許と解されます。
  コンピュータや通信技術を利用した人為的取決めやルール、アルゴリズムに関する特許としては、コンピュータ基礎技術・通信基盤技術に関するもの、電子決済や電子マネー等のビジネスシステムインフラ技術に関するもの等、ソフトウェア関連発明として、これまでも存在していましたが、現在、話題となっているビジネスモデル特許は、これらソフトウェア技術・電子決済・電子マネー等のインフラ技術を利用したビジネスのシステムに対する特許と言えます。
 
 ビジネスモデル特許成立の経緯
  そもそも、人為的な取決め・ルール・アルゴリズム等は、特許の対象外であったのが諸国統一の基準でありましたが、コンピュータ技術、特にソフトウェア技術の発達に伴い、1990年半ば頃から、この分野における特許要件の基準が崩れてきました。先ず、米国において、プロパテント政策(特許重視政策)の推進に即し、同国の先行技術分野であるコンピュータ・ネットワーク技術分野の成長の持続を期して、この分野での特許取得を可能にするため、1994年に米国特許法における特許適格性の要件が大幅に緩和されました。
  日本においても、以前よりソフトウェアにも特許権を認めるべきではないかとの議論はありましたが、こうした米国の特許政策の動向に連動するように、日本国特許庁が1995年「コンピュータ・ソフトウェア関連発明に関する審査基準」を発表しました。諸外国においても、それまで特許不適格とされていたソフトウェア関連の発明について特許性が認められる潮流が出来てきました。
  この後、ハードウェア資源を利用した上での人為的取決・ルール・アルゴリズム等に対して特許が成立しはじめます。この時期はビジネスモデル特許の黎明期にあたると考えられます。やがて、電子決済・電子マネー等のビジネスシステムインフラ技術等に対する特許が出現し発展期に入ります。日本において、シティ・バンクの電子マネー特許出願が公告され、邦銀の異議申立の砲火を浴び話題となったのが1995年でした。 尚、この特許出願は、1997年に拒絶査定されましたが、査定不服審判を経て、1999年12月に特許となっております。
  そして、1998年7月23日の米国のステート・ストリートバンク事件の判決により、これまで特許の対象とは認められていなかったビジネスの方法に関する発明に対しても、特許性が認知されたことをきっかけに、アマゾン・ドット・コム社のワン・クリック特許、プライスラインの逆オークション特許等のいわゆるビジネスモデル特許が続々と成立し、ライバル社への特許侵害事件と併せ話題となりました。
  こうした動きが日本にも飛び火し、1999年頃から、ビジネスモデル特許が巷を賑わせています。これまでは特許の対象とは考えられなかったような「オートカフェ」や、住友銀行の「入金照合システム」等が特許となり、話題となりました。
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 ビジネスモデル特許の作用効果
  この種の発明が特許されることは、ビジネスシステムの実施を法の下に一定期間(現行法では出願より20年間)独占できるということを意味します。
  これまでの特許は、一個もしくは一連の技術に対するものであったため、特定の技術的設備基盤のある環境において利用されるものが殆どであって、市場への浸透速度も利用範囲も限られていました。 しかしながら、これまで特定人が独占できなかった類の物流システムやマーケティング方法、広告方法、取引決済方法といったビジネスのシステムは、利用・応用範囲が広く、これに独占権が与えられた場合には、実質的に権利効果の及ぶ範囲が広くなります。
  例えば「オートカフェ」のような特許の場合、これまでは、自動食器貸出し装置、若しくは飲食物供給装置が特許の対象とされていました。つまり、特許された装置と実質的に同一の装置を製造若しくは販売して同様の目的に使用しなければ侵害が認められなかったわけですが、飲食店において食器を取る時点で課金するシステムといった汎用性を有する方法について特許されるとなれば、特許権の及ぶ範囲は実質的に広いものになります。
  また、新規ビジネス、特に、インターネット等のネットワークを利用したビジネスの場合、市場に浸透する速度も格段に早いと考えられ、これが市場にて支持されると同時に独占権が与えられた場合、市場に甚大な影響を及ぼすことが予想されます。
  従って、権利者にとっては、ビジネスモデル特許によって、そのビジネス市場を独占しかねない程の強力な権利を得ることも可能である反面、権利の無いものにとっては、特許されているとは知らずに利用していたビジネス手法に対して、突如、特許侵害を訴えられるという可能性が高くなることとなります。また、自己のビジネスの売りとしていたシステムや新規ビジネスに不可欠の手法が他人の特許権に抵触するとなれば、ビジネスそのものが思うように実施できないといった状況にもなりかねません。
  このように、ビジネスモデル特許は、これまでの特許とは無縁であった業界にとっても大いに関わってくる性質のものであり、また、これまでの特許より数倍の影響力をもった攻撃・防御両面からの重要な武器となりえます。
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 ビジネスモデル特許の問題点と必要性
  問題点としては、ビジネス手法に独占権が与えられることに関する点と、ビジネス関連発明についての審査基準との問題があります。


    ビジネスの手法に対する特許権付与について
  ビジネスモデル特許の性質から、情報技術関連・電子商取引市場・電子通貨市場における新規ビジネスについて利用されるビジネスシステムについての特許及び特許出願が多数ありますが、このように新たに生じたビジネス市場において、ビジネスの方法を特定人が独占することは、後発者の市場参入を阻害する側面を有しており、産業の健全な発達を期する意味においてはマイナス効果も存在します。この点から、ビジネスモデル特許の成立に警鐘を鳴らす専門家も少なくありません。
  しかしながら、種々の問題はあっても、知的創作である限り、通常の特許と同様に保護されてしかるべきであって、ビジネスの手法も技術要素と結合した形で経済効果を得られるのであれば、一定条件下において特許されることは、知的創作の世界においても、経済の発展の実情に即応するという面でもあるべき姿と考えます。なぜならば、ある企業が独自に開発したビジネス手法(システム)が、他者に簡単に利用されたり模倣・盗用されたのでは、企業努力は無となり、不正競走を惹起することとなるからです。
  従って、特定人に独占させるにふさわしくない発明は、技術的に高度でない、着想が容易である、新規性・進歩性に欠けるといった点で判断されるべきであり、ビジネス手法であるから特許性がないと判断されることではないと考えます。
  特許発明には、競合他社との差別化を計り市場を確保するために発明されたもの、他者への売却料又は他者からの実施料の取得のためにされたもの、他者との競合の中で防衛策として出願しておいたもの、純粋に先行技術を利用して発明されたもの等、様々であると考えますが、やがて、ビジネスモデル特許も、現場での洗礼をうけて、それぞれの取引市場の実情に即応した形で利用されていくと考えます。

  

    審査基準について
  当然ながら、どんなビジネス方法でも特許になるということではなく、特許されるには、自然法則を利用した高度な技術的思想であること、産業上利用できるものであること、新規性、進歩性があること等の特許要件は、従来と変わりありません。
  特許庁では、ビジネス方法に関する発明の多くがソフトウェア関連発明として位置づけられることから、1997年に作成された「特定技術分野の審査運用指針」における「コンピュータ・ソフトウェア関連発明」に関する審査運用指針に従って、その特許性を判断するという方針を公表しています。
  しかしながら、特許性判断に最も重要な新規性、進歩性の判断において、この分野における先行事例の情報蓄積の整備が未だ不十分であるため、実際の審査にあたっては困難が予想されます。このように、一応の審査運用指針は示されたものの、実質的な審査基準の確立には、しばらく時間を要すると考えられます。また、技術的進歩が特に著しい分野であることから、現状に即して今後審査基準が変動していくことも十分に考えられます。
  現在、ほとんどの先進国は属地主義(特許による保護が国内にのみ及ぶ主義)をとっていますが、ビジネス方法に関する発明の多くは、コンピュータ・インターネットを利用するものであるという特質から、その発明を実施する地理的範囲が必ずしも国内に留まらないという特殊な側面を有しています。このため、主要な先進国は、ビジネスモデル特許に関して、国際間での審査基準のあり方を重要な問題として捉えています。
  平成12年6月に開かれた日本、米国及び欧州の各特許庁による三極会談では、各々の特許庁のビジネス方法関連発明の審査においてその基本的姿勢に大きな差がないことが確認されました。すなわち、ビジネス方法が特許対象とされるには「技術的側面」が要求されること、及び、人間が行っている公知の業務方法をコンピュータ上で単に自動化しただけでは特許性がないことです。また、やはり各国共通の問題として、先行技術資料の整備の必要性が挙げられました。今後、この分野の審査に関して、各国の協力体制の強化・充実が図られると思われます。

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 ビジネスモデル特許取得のための対策
  競合他社の動向のウォッチング、情報収集をぬかりなく行うことが、当然ながら重要です。
  出願に当たっては、先行技術調査を行うことが妥当ですが、ビジネスモデル特許に関しては、ここ1~2年間に出願されたものも多いことから未公開ケース*が多いと考えられます。
  従って、ビジネスモデル特許の場合、調査をしても、抵触しそうな発明に係る特許出願が検出されない場合が多く想定されるので、大抵は、その発明を実施する或いはそのまま出願することとなります。
  尚、特許出願に対しては、出願公開後、何人も刊行物等の情報提供を行うことができますので、自己のビジネスモデルの実施後に、同じ様なビジネスモデルが他人によって出願されたことが分かった場合、その発明に進歩性がない(容易に想到できる)或いは新規性がない(出願前より公知であったようなビジネスモデルの場合等)の根拠となる書面を提出することにより、審査段階において、その特許出願の特許性を否定する情報の提供の機会があります。
  さらに、特許出願が特許された場合にも、特許公報の発行後の6ヶ月の間、異議申し立てをすることができ、また、その後は、利害関係のある者は無効審判を請求することもできます。従って、特許庁での審査以外にも、特許性のない出願/特許に対しては、第三者の働きかけによって、特許されない又は取消とされる場合があります。
  もし侵害を訴えられた場合には、訴えの根拠としている特許自体の特許性を問題として、特許無効審判を請求する手段がしばしば執られます。また、先願の特許出願に係る発明の内容を知らずにその出願の前から発明を実施していた者は先使用権(その発明を使用してもよい権利)を主張する場合もありますが、侵害事件となったとき若しくはなりそうなときには、弁理士や特許専門の弁護士に相談するのが妥当でしょう。
  尚、日本においてビジネス特許がらみの侵害事件若しくは特許無効審判事件が増加するのは、翌年以降と考えられます。
  よって、ビジネスモデル特許についての対応策は、常に他社の動向に目をはなさず情報収集を行うこと、必要であれば他人の特許出願・特許に対して情報提供、異議申立て等を行い特許権を行使される前に封じること、そして、何よりの攻撃策であり防衛策でもあるのは、技術的要素を含んだビジネス手法を着想したら、明らかに先行技術がある場合は別として、懼れず出願をすることと言えます。出願をすれば、審査過程において、他社の先行技術・関連技術を知る機会にもなりますし、もし公開後の情報提供等があれば、どの企業と利害が衝突しているかもわかるでしょう(既に分かっているケースが多いですが)、また、たとえ特許されなくても、公開されれば、同様の発明については他社も権利を取得することができません。但し、単なるアイディアをやみくもに出願しても、コストが掛かるばかりで実益に結びつきませんので、出願にあたっては、先行技術の有無はもとより、具体的に有用性があるか等も踏まえた上で、関連するビジネスモデルがあればこれを避ける形で技術的要素とともに発明の特徴を特定できるかどうかを検討して出願することが望ましいでしょう。
  
* 日本国出願は、出願後1年6ヶ月を経過したものが公開される。公開前は第三者は見ることはできない。
* 米国においては、出願公開制度を導入し、2000年11月29日以降の特許出願について、出願公開されることとなったが、対応する外国出願に係る発明以外は、非公開の申請ができるので、公開制度導入の効果が今ひとつ期待できない。
 
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